プリンセスになりたかった最強悪女

貧しい女の子がプリンセスになって、夢のような幸せを手にいれる、おとぎ話の世界。
そんなおとぎ話に憧れて、アンビリバボーな人生を駆け抜けた一人の女性がいる。

レオナ・ヘルムズリー、10年ほど前、愛犬に莫大な遺産を贈った女性として話題になったことから、ご存知の方もいるかもしれない。
しかし、本当にアンビリバボーなのは、彼女の人生そのものだった。
史上空前の成功を収めながら、望み通りの結末を迎えることができなかったレオナ。
その最期は、誰も予想できなかった孤独なものだった。
マンハッタンの女王、レオナ・ヘルムズリーの壮絶な生き様に迫る!


今から67年前、当時31歳のレオナに運命の日が訪れた。
彼女は、この日までありふれた平凡な人生を歩んでいた。

レオナはある日、バーで1人の男性と出会った。
しかし、彼女は結婚して13年になる夫がおり、一人息子も授かっていた。
だが、夫婦の関係は冷え切り、心が浮き立つ喜びのない空虚な日々。
レオナは、自分の未来に漠然とした不安を感じていた。

レオナはその男性とデートをするようになっていった。
彼女にとっては、つかの間の憂さ晴らしのはずだった。
すぐにいつもの生活に戻るつもりだった。


レオナは子供の頃、大好きだった父を亡くしていた。
ポーランドから移民としてニューヨークにやって来た両親。
しかし、成功の夢は叶わず、生活は貧しかった。

帽子職人だった父親は、妻とレオナたち4人の子供を守ろうと、毎日身を粉にして働いたが…過労と貧困のストレスが原因か、心不全で突然、命を落としてしまった。
その時、母はレオナにこう言ったという。
「あなたはおとぎ話のプリンセスになりなさい。そうしたらきっと『幸せ』になれる…いい?」


バーで出会った男性がアパレル会社の御曹司だと分かった時…『プリンセスになれるかもしれない、この男と一緒なら』、そう思った。
そして、心の奥底に眠っていた欲望を押さえつけていた心のタガが外れた。
レオナはアパレル会社の御曹司と付き合い始めた。
もちろん、夫には秘密で…

一方、御曹司も彼女に夢中になっていった。
レオナはもともと頭の回転が早く、会話も機知に富み、一緒にいる相手を退屈させなかった。
互いの夫婦関係は冷めきっていたため、2人は新鮮な恋に夢中になった。


そして…ダブル不倫が始まって2年後、レオナは夫を捨てるように離婚。
御曹司も妻と別れ、晴れて再婚した。
一人息子はレオナが引き取ったが、新しい夫は、自分の息子のように可愛がってくれた。
ニューヨークにある邸宅に住み、身の回りの世話をしてくれるメイドもいる。
満ち足りた生活だった。


ところが…レオナは現状の生活では満足できなくなっていった。
プリンセスに相応しい生活はこんなものではないはず。
そんな思いが強すぎるあまり…再婚してから7年後、会社の経営者である夫の父親が亡くなった時、レオナはすぐにでも会社の経営権を夫に譲れと、義理の母に詰め寄ったという。

それから数ヶ月後、なんとレオナは不動産会社の受付として働き始めていた。
プリンセスになって夢のような生活を…その想いが強すぎるあまり、レオナは愛想を尽かされ、御曹司との結婚生活は7年で終わりを迎えた。
一人息子はこの時、成人して独立していたとはいえ、レオナは自分の生活のために働くしかなかった。


しかし、彼女は『プリンセス』になることを諦めたわけではなかった。
独学で不動産業の勉強を始めた。
当時、不動産セールスは、女性の仕事としては珍しいものではなかったが、大きな利益を生み出す優良物件は男たちが独占していた。
とはいえ、結果を出せばのし上がっていける実力社会、彼女は絶対に成功してやると、心に誓った。


彼女は上司にセールス部門への移動を申請した。
だが、あっさり却下されてしまった。
しかし、数ヶ月後…社長からレオナをセールス部門に移すように指示が出された。
頭の回転が速く、努力家だったレオナは、巧妙に社長に取り入ったのだ。

彼女は、決して飛び抜けた美貌の持ち主ではなかったが、洋服やメイクに誰よりも気を使っていた。
幅広い知識と洗練された振る舞いを身につけ、魅了される男性も少なくなかった。

それだけではない、セールスレディとしての才能も高く、巧みな話術と有無を言わせぬ強気な姿勢で次々と契約を獲得していった。
こうしてレオナは、いつしか何人もの部下を従えるマネージャーに昇進。


ある日、社長に給料アップについて打診したところ、断られてしまった。
だが、それから間もなく、彼女はなぜか副社長になっていた!
実はレオナは、前の会社で給料のことを相談するとともに、これまでの実績と経験を引っ提げ、別の不動産会社に自分のことを売り込んでいたのだ。
そして、能力を評価してくれない会社をすぐに辞め、待遇の良い別会社へと移っていた。


2度の離婚からわずか8年、彼女の名はニューヨークの不動産業界に轟くようになっていた。
そして、レオナは運命の1日を迎えることになる。
この日、レオナは、不動産業界の要人たちが年に1度集うパーティーに初めて招待された。
会場には、名だたる大物が顔を揃えていたのだが…その中に、他とは明らかに違うオーラをまとった人物がいた。

ハリー・ヘルムズリー、当時60歳。
ニューヨークの高級不動産をはじめ、全米に展開するホテルチェーンの運営を手がけていた彼は、マンハッタンのシンボル、『エンパイア・ステート・ビル』のオーナーでもあった。
まさに不動産業界の帝王。
その資産は、当時の日本円で1兆8000億円と言われていた。


レオナはパーティーで、ハリーにダンスを申し込んだ。
実は探偵を雇って、ハリーがダンスには目がなく、パーティー会場では必ずダンスの相手を探すという情報を入手していたのだ。
そして、28年も連れ添った妻は、引っ込み思案でパーティーには同行しないことも分かっていた。

さらに、ハリーが目をつけている物件についても調べ、その周辺にショッピングセンターを作る計画があることを教えた。
すると…ハリーは自分の会社で働かないかと誘ってきた。
だが、レオナはこれをあっさり断った。

それには、こんなレオナの思惑があった。
『ハリーは富をなしてからは、自分の申し出を断られた経験なんてほとんどないはず、私が特別な存在に映ったのは間違いない。必ず連絡してくる。』


レオナの思惑通り、ハリーは後日、レオナに連絡をしてきた。
そして、年間50万ドル、当時の日本円で1億8000万円の報酬を提示してきたのだ。
さらに、マンハッタンにオープンする予定のホテルの利益も全てレオナのものにすればよいという。
それは、レオナの年収を遙かに超える破格の条件だった。

レオナは提示された金額に動じる素振りを一切見せず、逆にハリーの提案を疑ってみせた。
さらに、彼女に対する誓いの言葉を言わせることで、彼を精神的に屈服させたのだ。


こうして、破格の待遇でハリーの会社に移ったレオナは、ニューヨークを中心とした優良物件を優先的に与えられた。
やがて…2人がビジネスパートナー以上の関係になるのは、そう時間はかからなかった。
さらに、ハリーにとって、同じ不動産業に携わり、仕事の悩みや苦しみを分かってくれるレオナは、妻とは違い、良き理解者でもあった。
彼女はハリーにとって、ますます欠かせない存在になっていった。


ところが、レオナがハリーの会社に移ってから2年後、2人の関係を揺るがす『事件』が起きる。
レオナが他の男性からプロポーズされたのだ。
そして、レオナ自身も気持ちが揺れていることをハリーに伝えた。
すると…焦ったハリーは、レオナにプロポーズ!

実は、レオナは知り合いに偽のプロポーズの手紙を書かせていた。
ハリーの心を揺さぶるという目的は隠して…そして、長年連れ添った妻を見捨てることができずにいたハリーに、自分との結婚を決意させたのだ。
こうして、出会いから3年目の夏、ハリーは妻と別れ、レオナと再婚した。
レオナ、52歳。ハリーは63歳だった。


ハリーの妻となってからのレオナの生活は、まさに『プリンセス』、とんでもないものだった。
絶頂期に1兆8000億円の資産があったと言われるハリーは、エンパイア・ステート・ビルの他にも、全米に47のホテルを所有。
マンハッタンだけでも6つのホテルを持っていた。

結婚後のレオナとハリーの自宅は、セントラルパークに面したホテルのペントハウス。
300坪という広大な間取りで、室内プールも完備され、マンハッタンを360度見渡すことが出来た。
週末になると、コネチカットにある、およそ10億円の豪邸で過ごした。
28部屋もあるレンガ造りの大邸宅で、庭も含めるとその広さは、東京ドームの3倍半もあった。
この他に、フロリダにも別荘を所有しており、毎回、プライベートジェットで行き来していたという。


夢を掴み取ったレオナの心は、充足感でいっぱいだった。
この頃には、仕事も辞め、不動産王の妻としての生活を満喫。
幸せの絶頂にあったレオナ。
ところが…そんな彼女の心にある変化をもたらす出来事が起こる。

あるパーティーで、美女がハリーにダンスを申し込んだのだ。
レオナは激しく嫉妬するとともに、言い知れぬ不安に襲われた。
ハリーを奪われたら、今の自分は何者でもなくなる。
不動産王の妻という肩書きは、所詮、ハリーの名声に頼った不確かなもの。
お飾りのプリンセスではダメだと悟った彼女は、女王になるためにある行動に出る。


レオナは、ハリーにホテルの仕事を任せて欲しいと頼んだ。
ハリーは、1970年代から80年代にかけて、マンハッタンをはじめ、全米でいくつもの高級ホテルをオープンさせていた。
レオナが運営することになったのは、マンハッタンに1980年にオープンした『ヘルムズリー・パレスホテル』。
歴史的建物をリノベーションした、超高級ホテルだった。

そして、このホテルを任されたレオナは、突然、写真撮影を命じた。
ホテルの中で豪華なドレスに身を包み、満面の笑みを浮かべるレオナ。

実はこれ、当時のパレスホテルのパンフレット。
添えられたキャッチコピーは…『女王が護衛する世界で唯一の宮殿』。
そう、レオナは自らが広告塔となり、パレスホテルを大々的に宣伝。
加えて、自分はただの不動産王の妻ではなく、女王であるというイメージを植え付けていったのだ。


ホテルの女王として君臨したレオナは、常に幹部を引き連れて業務にあたっていたという。
部下たちの中には、彼女のことを『女王様』と呼ぶものもいた。
さらに、女王のホテルに恥じないサービスを提供するために、従業員たちへの教育も徹底した。
ド派手な広告戦略と、女王の名に恥じないサービスが功を奏し、パレスホテルの稼働率は一気に伸びていった。

こうして、ハリーが所有するホテルのほとんどを任されるようになったレオナは、同様の戦略で赤字続きだったホテルを次々と蘇らせていった。
レオナが打ち出した超高級路線は、好景気が続くアメリカの状況とマッチ。
彼女は時代の波に見事に乗った。
その活躍は、業界でも話題となり、レオナは名実ともに『女王』としての地位を築き上げた。


ところが、レオナの周囲には多くのライバルが出現。
その中に、パレスホテルと同じような高級ホテルをマンハッタンにオープンして、真っ向から勝負を挑んできた人物がいた。
当時、不動産王として頭角を現していたドナルド・トランプ。
レオナの26歳年下で、30代半ばだったトランプは、その若さと勢いで急成長を遂げていた。
台頭してくる若い力に焦りを感じていたレオナのホテルマンたちへの指導は、ますます厳しいものになっていた。


レオナには、最初の夫との間にできた一人息子がいた。
当時40歳になろうとしていた息子のジェイは、彼女の計らいでホテルの重役として働いていた。
レオナは他の従業員同様、息子のことも厳しく指導していたつもりだった。

だが、ある時…ジェイがホテルの金を不正に使用していたことが発覚する。
彼女は激しく叱責したが、息子を警察に突き出すことはもちろん、重役のポストから外すこともしなかった。
そのことについて、従業員の間で不満に思う者もいた。


レオナが女王に君臨した2年後…一人息子のジェイが仕事中に突然、亡くなってしまったのだ!
彼は女王の息子として、ホテルの重役を任されていたが、自分の能力以上のポストにプレッシャーを感じていた。
昔からいる従業員たちからの冷たい視線を気にしながら、母親レオナの要求に応えようと必死に働いていた。
しかし、もともと心臓に疾患を抱えていたという彼は、極度のプレッシャーに押しつぶされるように、心臓発作で命を落としたのだ。

突然、一人息子のジェイを失ったレオナは悲しみに暮れた。
ジェイには妻と4人の子供たちがいたのだが、レオナは息子を失ったやり場のない感情を残された家族へと向けた。
レオナは、息子たち家族のために豪華な家を買い与え、相当な額の生活費も援助していたが、全て取り上げたという。


レオナの横暴で理不尽な振る舞いは、息子を亡くして以来、度を越すようになっていた。
少しでも気に入らないことがあれば、次々に社員をクビにしていったのだ。

そんな彼女の傲慢さは、仕事以外でも現れた。
豪邸の改装費…それを仕上がりに納得がいかないと、改装費を踏み倒したのだ。
工事業者は訴えたのだが、レオナは優秀な顧問弁護士によって、工事業者の訴えをいとも簡単に退けた。

誰にも止められない暴君、レオナ。
ところがこの後、思いがけない事態が勃発する。


レオナが巨額の脱税をしているという告発記事が新聞に掲載されたのだ。
新聞社に情報をリークしたのは、豪邸の改装費を踏み倒された工事業者だった。
レオナは個人的な支出を会社宛に請求させていた。
業者も不正だと分かっていたが、大きな仕事が欲しかったため、大富豪であるレオナの言いなりになっていたという。

別荘の修復費用など高額なものから、わずか数十ドルの下着や靴下にいたるまで、彼女はあらゆるものを経費に計上していた。
さらに、会社ぐるみの不正経理などにより、脱税した総額は9億円以上。


そして、新聞報道がきっかけで、国税庁から目をつけられたレオナは、脱税などの罪で逮捕された。
それは、彼女がホテルの女王となってから、8年目のことだった。

逮捕されたにも関わらず、余裕の笑みを浮かべているレオナ…それには理由があった。
優秀な顧問弁護士によって、すぐに釈放されると考えていたのだ。


もくろみ通り、すぐに釈放されたレオナは、いつものように優秀な弁護団を結成し、事態の収拾を図ろうとした。
ところが…誰の協力も得られなかったのだ。
その上、経理の人間も請求書のことを全部税務署に話してしまっていた。
さらに、賃金の未払いや、不当解雇で訴えるという元従業員も出てきて、手の打ちようがなくなっていた。

アメリカの法律では、重罪犯となった人物は、アルコール販売を伴う経営は行えないと決められている。
高級ホテルにアルコールは必須。
有罪になれば、実質、ホテルの経営資格を失うことは明白だった。


逮捕されてからおよそ1年後、彼女はついに起訴され、全米が注目する裁判が始まった。
脱税の罪はレオナだけではなく、夫のハリーも対象だったが、80歳という高齢に加え、裁判所の精神鑑定により、記憶障害や物事の理解に問題があると認定されたため、審理から外されることになった。

法廷では工事業者の男性や、ホテルの従業員たちが次々と証言に立ち、脱税のことばかりでなく、不当な扱いを受けていたことを訴え、レオナの人間性を非難した。
その中でも、特に世間に大きな衝撃を与えたのが、レオナの身の回りの世話をしていた元家政婦の証言だった。
「奥様は常々こう仰っていました。税金は私じゃなくて、庶民が払うものだと。税金なんて貧乏人が払えばいいのよって」


レオナはこの暴言の暴露によって、全米を敵に回した。
ホテルの女王としての彼女を評価していた不動産関係者や、政治家たちも一気にレオナ叩きに加わった。
もともとライバル関係にあったトランプも、レオナは業界の恥さらしだと責め立てた。

また、次々と暴露されるレオナの横暴さを目の当たりにした裁判官は、とうとう彼女のことを強欲だと非難した。
そして、メディアはレオナを総攻撃した。
するとレオナは…自分が大富豪の妻ゆえに、妬まれて攻撃されているのだと訴えた。


そして、レオナに有罪の判決が下された。
レオナはあくまでも無罪を主張し、控訴、上告もしたが、裁判開始から3年後、量刑に関する判決が言い渡された。

4年の実刑判決を受けたレオナは、刑務所に入る直前になんとテレビ番組に出演。
その貴重な映像が残されている!
彼女は部下たちへのひどい扱いについて聞かれると、自らの正当性を主張した。
さらに夫・ハリーについては、深い愛情を強調した。
そして、有罪判決については…「母に「助けて」ってお祈りするの。誰か お願い 助けて…」


天国から地獄へと転がり落ちたレオナ。
悪質な脱税で重罪犯となり、実質的に経営資格を失った彼女は、全てのホテルを売却。
さらに、不当解雇を受けた従業員や、賃金が未払いだった出入り業者などからも訴えられ、その賠償金を支払うために数多くの不動産を手放したという。

レオナが収監された刑務所は、憧れ続けた『プリンセス』の世界とは程遠いものだった。
彼女は鉄壁に囲まれた『プリズン』の冷たいベットで眠った。


その後、彼女が高齢であることと、夫の病状が深刻であることが考慮され、最終的には、18ヶ月の収監と2ヶ月の社会奉仕活動、1ヶ月の自宅軟禁に減刑された。
1994年に、レオナは刑期を終えるが…その3年後、ハリーが87歳でこの世を去った。

レオナとハリーの間に子供はなく、また、ハリーと前妻の間にも子供がいなかったため、レオナはハリーの所有する全ての財産を相続することになった。
その額は、全盛期から大きく減って、およそ700億円になっていたが、それでも莫大な金額だった。
レオナは全財産を抱えたまま、豪邸に引きこもり、表舞台から姿を消した。


ところが、今から11年前の2007年、とんでもない行動により、彼女は再び全米の注目を集めることとなる!
この年の8月20日、レオナは心不全により、ハリーと同じ87歳でこの世を去るのだが、世間では彼女の残した莫大な遺産の行方に注目が集まった。

我々は、なんとレオナの遺言書のコピーを手に入れた。
滅多に表に出ることのない貴重な文書。
そこには、とんでもないことが記されていた!


実は、レオナは莫大な財産のほとんどをチャリティ基金に寄付し、その上で、一部を家族などにも分け与えていた。
彼女には、姉2人と、弟が1人いたが、姉2人はすでに他界していたため、存命だった弟に当時の日本円でおよそ17億円を…
また、息子の死後、全てを取り上げていた孫たちに対して、彼女は晩年、思い直したのか、それぞれに最高で12億円が与えられた。

ところが、レオナが弟や孫たちと同じように財産を与えた思いがけないものがあった。
それが…愛犬。
なんと、レオナは晩年に飼っていたメスのマルチーズに、当時の日本円でおよそ14億円もの遺産を与えたのだ。
マスコミは、レオナの遺言をセンセーショナルに取り上げたが、そこには女王に上り詰め、そして転落した彼女のある想いが込められていた。


女王として栄華を極めていた頃のレオナのもとには、多くの政治家や著名人たちがこぞって集まっていた。
しかし、出所後、表舞台から姿を消したレオナは、パーティを一切行わなくなった。
ハリーの看病に専念するためだと彼女は語っていたが、その実、重罪を犯したレオナたちに誰も寄り付かなくなったというのが、最大の理由だと言われている。

そんな彼女が、ハリーが亡くなった直後に飼い始めたのが、メスのマルチーズだった。
女王陥落後、周りから多くの人間が去ったことで、人間不信に陥っていたと言われるレオナ。
彼女は晩年、この犬だけをこよなく愛していたという。


そんな愛犬をレオナは『トラブル』と名付けていた。
この犬がレオナを、人や厄介ごとなどの『トラブル』から遠ざけてくれるように願いを込めて、あえてそう名付けたようだった。
そう、愛犬のトラブルだけが、晩年のレオナ、唯一の心の拠り所だったのだ。

彼女は亡くなる直前、こんな言葉を残したという。
「わたしのおとぎ話は終わった…」


晩年、強欲な女王として全米から総攻撃を受けたレオナ。
同様に彼女を攻撃したドナルド・トランプは、レオナの死後、テレビ番組の電話取材で彼女の実力を認める発言をしている。
トランプだけではない、不動産業界の他の者たちにとっても、レオナは間違いなくパワフルで優秀な女性だった。

こうして、死後、彼女を再評価する声があがる中、遺産を与えられた孫たちは、レオナについて一切口を閉ざしている。
だが、それぞれが不動産関係などの仕事で活躍しているという。


レオナの死後、トラブルは、ヘルムズリーホテルのマネージャーが面倒を見ていた。
そして、レオナの死から3年後にトラブルも死去。
その遺産は、慈善信託基金に引き継がれ、様々な病気の研究や貧困の子供を救うための活動に使われている。


トラブルはレオナの希望を尊重して、彼女と同じ場所に葬られた。
レオナとトラブルが葬られている霊廟は、ニューヨーク近郊にある。
神殿のような建物で、大きさは約1100平方メートル、畳に換算すると約670畳という巨大な霊廟だ。
もともとは、レオナが夫・ハリーと自分のために建てたもので、彼女は一人息子のジェイの亡骸もここに移している。

この霊廟を建てるために掛かった費用は、約1億6000万円。
当時のマンハッタンのマンションの平均価格1億5000万円より高額だった。
レオナは今、浮世離れした神殿のようなお墓に、夫・ハリー、一人息子のジェイ、そして愛犬・トラブルとともに眠っている。
彼女はこの場所で、今度こそ、ハッピーエンドのおとぎ話を夢見ているのかもしれない。

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