娘のために奇跡起こす母の情熱

去年のクリスマス、10歳の少女が全米の話題となった。
アメリカの普通の小学生が、一躍時の人となった理由とは?
そこには愛によって明らかになった、ある「奇跡」が秘められていた。

全ての始まりは、今からおよそ10年前。
アメリカ・ウィスコンシン州に住むドアリング家に、新たな家族がやってきたことだった。
産婦人科医の夫・トーマス(当時42)と、医師助手として働く妻のジェニファー(当時37)。
2人の間には3人の男の子がいたが、どうしても女の子が欲しかったジェニファーは、年齢のことも考え、中国から養子を迎え入れたのだ。

だが、オードリーと名付けられた赤ちゃんは、先天的に心臓に重い病気を抱えていた。
ジェニファーは、寝る間を惜しんでオードリーの看病をした。
その後、オードリーは2度の心臓手術を乗り越えて、病気も少しずつ回復。
両親や兄弟の愛情を受け、元気な少女へと成長していった。

そして、およそ9年の時が流れた。
オードリーは、実の両親は自分のことが嫌いだったのだろうかと思い悩むようになっていた。
そこで ジェニファーは、中国にいたころのオードリーについて調べてみることにした。
オードリーは、成長し、自分のことを知る準備もできていると感じたからだった。

ジェニファーは、オードリーが1歳半までいた、中国の施設に連絡を取った。
だが、わかったのは…生後わずか1週間で中国江西省にある児童養護施設の前に置き去りにされていたこと。
そして、その施設があった銅鼓県にちなんで、トンミンク?イと名付けられたことだけだった。

生まれて1週間で、赤ちゃんを手離していては身内を探す術はないと思われた。
ところが、施設からのメールには、施設で撮られたという1枚の写真が添付されていた。
そこには、生まれて間もない2人の赤ん坊が…どちらがオードリーかわからないくらいよく似た瓜ふたつの赤ちゃんの写真だった。

さらに、その後入手した資料を見ると、2人が同じ日に同じ施設の前で放置されていたということも分かった。
もう1人の赤ちゃんは、トンミンメイと名付けられていた。
だが、守秘義務もあり、養護施設はそれ以上の情報を教えてくれず…
このオードリーの双子に間違いないと思われる赤ん坊が、どこの国に引きとられて行ったのかさえ分からなかった。

それでもジェニファーはその子を探すため、別の養子斡旋団体などに、片っぱしからメッセージを送った。
だが…どんなに探しても何の手がかりも得られなかった。

結局、何も分からないまま過ごしていた、ある日のこと。
このころ、ジェニファーは情報を集めるために、Facebookを利用していた。
Facebookでは自分と交流を持っている人のページに行くと、自分も含め、その人と交流のある友人たちのリストが写真付きで表示される。

そして、ある児童擁護団体のページの友人リストを見ていた時、普通は自分の顔写真などを使用することが多い自己紹介用の画面に、『Donate Life』「命の贈与」と書かれたロゴを使用している人物を発見した。
そのロゴは、臓器提供への理解を広めるために、ある支援団体が作ったものだったのだが…その瞬間、ジェニファーにある考えがひらめいた。

ジェニファーは、オードリーに「もしあなたに姉妹がいたら会ってみたい?」と聞いた。
そして、彼女に1枚の写真を見せた。
そこに写っていたのは…オードリーと瓜ふたつの少女だった。

そう、ジェニファーはついに探し当てたのだ、オードリーの双子と思われる存在を!
ジェニファーは、トンミンメイという子がオードリーの双子だったなら、オードリーと同じように心臓に疾患があるに違いないと考えた。
そして、彼女の両親も臓器提供に興味を持っているのではないかと考えたのだ。

実は、ジェニファーは、オードリーが病気を抱えていたこともあり、あのロゴの支援団体のことを以前からよく知り、賛同もしていた。
そこで、早速そのロゴを自己紹介画面に使用していた人物、アンドレア・オルソンさんにコンタクトを取り、トンミンメイについて聞いみた。

すると…なんとオルソンさんは、過去にトンミンメイという名前の少女と関わったことがあると言ってきたのだ!
その後、オルソンさんにも協力してもらい、数日後、ついに養母がやっているFacebookにたどり着くと、そこで公開されていた写真の中から、オードリーそっくりの少女を発見。
彼女は、グレーシーという名前で、ワシントン州に暮らしているという。

ジェニファーはすぐにグレーシーの養父母にメッセージを送った。
オードリーの写真を添えて…

グレーシーの母・ニコルさんは、その時のことをこう話してくれた。
「ジェニファーから送られてきた写真を見た時、状況を理解できませんでした。あら、娘のグレーシーがなんで他の家族と映っているの?この人たちだれなの?って本当に不思議な感覚でした」

生後間もなく別れてから、9年ぶりに見る双子の姉妹。
最初は戸惑ったが、少しづつその距離を縮め、1ヶ月後、特別な日がやってきた。

この驚くべきエピソードを知ったテレビ局が、2人をニューヨークのスタジオに招き、再会の場を提供してくれることになったのだ。
生まれて間もなく中国の地で離れ離れになった双子の姉妹は、実に9年以上の時を経て、ニューヨークで奇跡的に再会を果たしたのだ。

今年1月、奇跡の再会を果たした2人。
その後もサンディエゴに旅行へ行くなど、家族ぐるみの交流が続いている。

そしてジェニファーさんには今伝えたい思いがある…
「きっと生みのご両親は2人を愛していたからこそ、養子に出したのだと思います。幸せな人生を歩んで欲しかったのだと。私は感謝してます。オードリーは素晴らしい娘だもの」
母が繋いだ2人の絆は、これからも永遠に続いていくだろう。


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