自動車炎上事故を目撃!あなたならどうする?

今から10年前、当時中学3年生だった小倉遼くんは、高校入試を目前に控えていた。
いつもは夜7時過ぎに塾を出るのだが、この日はたまたま友人と話し込み、塾を出たのは夜8時近くだった。

その頃、塾から10キロほど離れた所では、とあるアマチュア写真講座が開かれていた。
講師を務めるのは、藤田健さん。
藤田さんは、この講座を10年以上続けており、この日もいつも通り、夜8時ちょうどに終了。
普段は片付けに10分ほどかかるのだが、割合スムーズに片付いたため、少し早めに教室を出た。
この、いつもと違う何気ない時間のズレが、何の接点もなかった2人の運命を大きく変えることになる。

教室から藤田さんの自宅までは車で約20分。
車の通りは決して多くなく、信号も数えるほどしかなかった。
だが、自宅に続く脇道に入る所でちょうど対向車が来たため、一旦、車を止めた。

次の瞬間!
後ろから走ってきた車が、藤田さんの車に激突!
その衝撃で車はバランスを崩し、横転してしまった。
幸い、藤田さんには大きな怪我はなく、追突した女性も無事だった。

だが、横転した衝撃で車体が歪み、ドアも窓も開かなくなっていた!
さらに、追突の衝撃から、マフラー付近にガソリン漏れが起こり、そこから出火!
車体後部が炎上し始めた!
追突した女性はただパニックになるばかり。
しかも、消防も警察も到着には数分を要するという。

藤田さんはガラスを割って、脱出しようと考えたが、車内にはガラスを割れそうな道具は何もなかった。
さらに、車内に煙が充満し始めた。
脱出する方法はない…まさに絶体絶命の状況だった。

小倉くんが、事故現場にやって来た。
家に帰る途中、衝突音が聞こえたため、気になって様子を見に来たのだ。

辺りにはガラスを割れそうな物は何もなく、炎の勢いも増していくばかり。
後続車の運転手たちも、勢いよく燃え上がる炎にどうすることもできずにいた。
もはや、いつ爆発が起きてもおかしくない状況だった。

炎の勢いはますます増し、不用意に近づけば爆発に巻き込まれる危険もある。
だが、小倉くんは危険を顧みず、藤田さんの救出に向かった!

小倉くんは、なんと素手でフロントガラスを殴り始めた!
だが、格闘技経験などなく、運動部にも入っていなかった小倉くんのパンチでは、ヒビ一つ入らない。

そもそも、車のフロントガラスは、合わせガラスと呼ばれる2枚のガラスで出来ており、脱出用のハンマーを使っても中々割れないほど頑丈に作られている。
案の定、ガラスはビクともせず、彼をあざ笑うかのように炎は勢いを増していくばかり…血だらけの拳も限界を迎えていた。

だが!小倉くんが諦めずに、思いっきり打ったパンチで、何とフロントガラスに大きなヒビが入ったのだ!
すると、藤田さんが内側からフロントガラスを蹴った!

ヒビが入ったガラスを蹴ったことで、奇跡的にガラスと車体との間に隙間ができた。
すると、まさに火事場の馬鹿力で、小倉くんはフロントガラスをめくり上げた!
そして、何とか藤田さんを救出した次の瞬間!
車が爆発!

これが、事故後に撮影した車の写真。
完全に骨組みだけとなった車内が、爆発の大きさを物語っている。

藤田さんがお礼を言おうと振り返ると、なぜか助けてくれた小倉くんの姿がどこにもなかった。
小倉くんは、なぜ現場から忽然と姿を消してしまったのか?
その理由は…「名乗らないっていうのが、どことなくカッコ良いと思っていて。立つ鳥跡を濁さずみたいな。」

その後、藤田さんは駆けつけた警察に事情を聞かれ、念のため病院へと運ばれることになったのだが…
その病院に、小倉くんが来ていた。
実は、帰宅した小倉くんの血だらけの姿を見て、母親が慌てて病院に連れてきたのだ。

そこで、偶然にも藤田さんと再会。
小倉くんも警察に事情を聞かれることになり、全てが明らかになった。
結果、小倉くんの活躍は学校にも知れ渡り、本人の思いとは裏腹に地元の有名人になってしまったのだ。

奇跡の救出劇から10年、現在25歳になった小倉さんが訪れたのは、藤田さんのお宅。
2人は近所に住んでいたこともあり、今も何年かに一度、交流を持っているという。


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