ルイス・マルキー ~弱小バスケ部・奇跡の大逆転~

これは全米が涙した、ある奇跡の瞬間を捉えた映像である。
とある高校のバスケットボール部が、州大会優勝を目指して戦っていた。
しかし、相手チームリードのまま、試合は終盤へ。

その時…湧き上がる「ルイス・マルキー」という大声援…しかし、この会場にそんな名前の人物などいなかった。
一体、“ルイス・マルキー”とは何者なのか?
万年最下位の弱小バスケ部と、一人の消防士…彼らが出会った時、奇跡の逆転劇は始まった。

アメリカ・サウスカロライナ州にあるサマーヴィル高校。
今から12年前、この田舎町の高校に、バスケットボール部の入部希望者たちが集まっていた。

実はこの高校のバスケ部は、毎年、州大会の地区予選で敗退する弱小チーム。
しかし、部活動が単位として認められていたため、それを目当てに入部する、成績の悪い生徒も多かった。

そこへ…コーチとしてやって来たのがルイス・マルキーだった。
ルイスは彼らにいきなりこう言った。
「君たちは、卒業までに州チャンピオンになる。自分たちの可能性を信じるんだ!」

ルイスの本職は消防士。
サマーヴィル高校のOBだったが、学生時代はアメフト部に所属、バスケット経験はほぼ無い素人だった。

部員たちはルイスの言葉をまともに受け取ろうとしなかった。
バスケ部に所属する多くが、貧しい黒人家庭の子供たち。
無気力で、成績も悪い彼らを、一部の大人たちは「落ちこぼれ」扱いしていたのだ。
彼らは、ルイスもすぐに自分たちのことを投げ出すだろうと思っていた。

だが、ルイスは1番に体育館に来て生徒を待っていた。
しかも、ルイスは練習前に宿題をさせ始めた。
その上、勉強だけでなく礼儀作法にまでうるさく口を出した。
更に、自己中心的なプレーをする者には、容赦なくペナルティを課した。

だがその一方で、ルイスは、練習が終わる度に、部員たち全員に食事をご馳走。
彼らの悩みや相談にも真剣に耳を傾けた。

バスケット部員のうち、AJとミルハウスは練習をサボリがちだった。
部員の一人、ミルハウスの家は特に貧しく、彼自身もアルバイトをして家計を支えていた。
その為、バスケットシューズさえ、買えない状況だった。

一方、AJは、集中力が持続できないという発達障害を患っていた。
そのため、既に2度の留年を経験。後が無い状況だった。

AJはバスケットの才能がずば抜けていた。
だが、自分のような馬鹿には大学なんて無理な話だと諦めていた。

実はAJは幼い頃に、乗っていた車が事故を起こし、同乗していた5歳上の兄を亡くしていた。
兄は勉強もスポーツも得意。
誰からも愛された彼は、AJのヒーローだった。

AJがルイスに、「出来の悪い俺が死ぬべきだったんだ! 神様が間違ったんだ!」と言うと…
ルイスは、「AJ、君の人生を決めるのは、決して神様じゃない。君…自身だ」とAJに言ったのだ。
それからというものルイスは、練習後は付きっきりで、AJの勉強を見るようになった。

そして、ルイスはミルハウスにも、新しいバスケットシューズを買い与えていた。
AJとミルハウスは、なぜルイスが自分たちにそこまでするのか理解できないでいた。

そんな時、ルイスの婚約者・ローレンと話す機会があった。
ルイスはローレンにこう言ったという。
「僕は彼らのために何でもするつもりだ。だから彼らも誰かのために必死になれる、そんな人間になって欲しいんだ。」

ルイスが幼い頃、通信技師だった父親が失業。
以来、生活は困窮を極めていた。
だが、両親は少ない食料を近所の貧しい家庭に分け与えていた。
両親は、ルイスを自分のことだけを考えるのではなく、常に相手のことを考える人になるように育ててくれた。

サマーヴィル高校を卒業したルイスは、人の役に立ちたいとの思いから、消防士になった。
やがて母校のアメフト部のコーチに就任したが、バスケ部の惨状を目にし、自らコーチに名乗りを上げたのだ。

それから、地区予選では負け続けだったサマーヴィルが、徐々に勝利を収めるようになっていった。
その原動力となったのが、チームを率いるミルハウスと、華麗なプレーで得点を量産する AJの2人だった!
そして翌年、チームはついに、州大会本戦への切符を勝ち取ったのだ!

一方ルイスは、恋人のローレンと結婚。
まさに順風満帆だった。

その日、サマーヴィル郊外にある、家具店で火災が発生。
ルイスが率いるチームも出動し、店内に取り残された従業員の救出に当たっていた。
その時だった…爆発的な延焼を引き起こす、フラッシュオーバーが発生。
巻き込まれたルイスは…そのまま還らぬ人となった。

事故直後に、無線で交わされた、ルイスの最期の音声が残されている。
「メーデー(SOS)…妻にメッセージを伝えてください。愛していると…」
しかし、ローレンは、何も手につかなくなり、一日中家に引きこもるようになってしまった。

バスケ部のメンバーも…誰もが絶望し、気力を失っていた。
だが、ミルハウスとAJは違った。
チームメイトを励まし、こう言った。
「ルイスだったら絶対にこう言うはずだ。“何があっても諦めるな。自分たちの可能性を信じろ”ってな」

そして、ローレンの元を訪れ、ルイスの夢を実現するために、絶対に優勝すると誓ったのだ。
そこにはもはや、自分さえ良ければいいと考える者はいなかった。

そして、サウスカロライナ208校の頂点を決める州大会本戦、最終学年の彼らにとって最後の大会が開幕。
予選を勝ち抜いた、32校によるトーナメント戦。
優勝するには、5連勝しなければならなかった。

彼らの傍らには、消防署から贈られたルイスのヘルメット。
そして、ローレンが見守る中、サマーヴィル高校の戦いは始まった!

ルイスへの思いを胸に、チーム一丸となったサマーヴィル高校は、度重なる接戦を制し、破竹の4連勝。
そして、ついにこの日…彼らは決勝の舞台にまで勝ち上がってきた!

選手たちの胸にはルイス・マルキーのファンを意味する、「マルキー・マニア」の文字。
靴には、ルイスのイニシャルが刻まれていた。
それは彼らがお金を出し合って、揃えたものだった。
しかし決勝の相手は、過去4回の優勝を誇る、スパルタンバーグ高校。
果たして、勝負の行方は…!?

緑のユニフォームがサマーヴィル高校である。
試合は、開始直後から一進一退。
サマーヴィルはミルハウスとAJを中心に得点を重ねる。
しかし敵も負けていない、優勝候補のスパルタンバーグもすかさず取り返す!

第2ピリオド終了の時点で、サマーヴィルが2点をリードする展開に。
その後も、優勝候補相手に一歩も引くことなく…リードを守ったまま、試合はとうとう最終・第4ピリオドに。

だが…ここに来てサマーヴィルは立て続けに失点。
残り時間2分で、4点のリードを許す展開となった。

もはや主導権は、完全に相手チームが握っていた。
その時!「ルイス・マルキー!」
ルイスの名前が、会場中に鳴り響いた!

すると…その声に押されるように、サマーヴィルが立て続けにシュートを決め逆転!
点差は2点に。
そして…試合時間、わずか1.7秒を残し相手チームがファール、サマーヴィルにフリースローが与えられた。
シュートが入っても入らなくても、1.7秒後には、サマーヴィルの優勝が決まる…はずだった。

終了間際、相手チームにスリーポイントシュートを決められ、逆転負け。
優勝の夢は潰えた…と誰もが思った、その時!
実況:「無効です。ノーカウントです。」

実は、相手チームがシュートを放った時には、既に残り時間はゼロになっていたとして、得点は無効になったのだ。
ルイスの教えが実を結んだ瞬間だった!
ルイスコーチの信念と、それに答えようとした落ちこぼれたちが起こした、奇跡だった。

奇跡の逆転劇から9年。
現在、サマーヴィル高校バスケット部は、毎年州大会の本戦に出場。
強豪チームに成長している。
そして今でも…ルイスのヘルメットは、体育館に保管され生徒たちを見守っている。

一方、妻のローレンは現在、弁護士となり、日夜法廷で闘っている。
いつも他人の幸せを願っていたルイス、立ち止まらず前を向いて歩く自分を見れば、きっと彼も喜んでくれる。
そう思えるようになったという。

そして昨年、すべてを受け入れてくれる男性と出会い再婚。
今年3月には長男が誕生した。
ルイスがいたから今の幸せがある、そう語る彼女の現在のフルネームは、ローレン・マルキー・フリアソン。
ルイスの名前をミドルネームに残しているのだ。
もちろん今のご主人も快く了承してくれたという。

そして、奇跡の優勝を成し遂げたバスケ部のメンバー、デュウェイン・シモンズは、現在、税理士となって活躍中。
ブランデン・ミルハウスは、列車の運行指令員として働く一方、地域の子どもたちにバスケットを教えている。

そしてバスケットの選手から、NFLのトップスターにまで上り詰めたAJは…
「2年前に、貧しい子供たちの為の奨学基金を設立したんです。ルイスがしてくれたように、今度は僕が恵まれない子供たちの可能性を広げる手伝いをしたいと思っています。」

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