人身売買の少女を救え!飛行機内救出大作戦

飛行機の客室乗務員。
その仕事は、乗客たちを安全かつ快適に目的地まで送り届けることである。

今から6年前、アラスカ航空の客室乗務員であるシリアは、シアトルからサンフランシスコ行きの便に搭乗していた。
時間にして、わずか1時間半ばかりのフライト。
それは、いつもと変わらぬ日常…のはずだった。

シリアは、ある2人組に違和感を感じた。
男性はスーツ姿でキチンとしていたのにも関わらず、一緒にいた少女は旅行とは思えないほどラフな格好をしていたのだ。
さらに、少女の腕にはアザの痕もあった。

そして…ドリンクサービスで機内を回っている時のことだった。
さきほどの少女と目が合ったのだが…少女の表情には恐怖の色しかなかったのだ。
シリアは、何とかしなくてはいけないと感じた。

シリアが感じ取った事、それは…『人身売買』
アメリカでは近年、人身売買が横行。
昨年だけで、未成年者の被害数は2400人を超える。
その目的のほとんどが、売春の強要。
一説には、世界で毎年10万人もの子どもが売買されているとも言われている。

シリアは、客室乗務員が任意で受ける、人身売買を見抜く講習を受けていたため、この異変に気付いたのだ。
しかし…本当に少女が犯罪に巻き込まれているのか?
100%の自信はまだ持てなかった。

もし、二人が親子か親戚だとすれば、男性に名誉毀損で訴訟を起こされかねない。
少女に直接確かめるしかない…シリアは、メモを渡して筆談で彼女とコンタクトをとろうと考えた。

しかし、そこには一つ問題が…少女が座っているのは、奥にある窓際の席。
手前に座っている男性に気づかれずに少女にメモを渡すのは至難の技。

もし、ドリンクと一緒にメモを渡せたとしても…少女が男性に気づかれないように読み、何らかのリアクションをシリアに送ることなど、不可能に近いと思われた。
さらに、男性が人身売買の犯人だった場合…メモによって自分の犯行がバレたと知れば、隠し持っている武器で、少女や他の乗客に危害を加える可能性もある。
一体どうすれば、彼女にメモを渡すことができるのか?

シリアはあることを思いついた。
およそ1時間半のフライト。
その間、一度くらいなら少女がトイレに席を立っても、男性は怪しまないはず。

しかし、そこには問題が…機内にはトイレが2つあったのだ。
どちらにもメモを貼った場合…万が一、二人が同時にトイレに立てば、男性にメモの事がバレてしまう。
しかし、1つだけに貼ると、もう1つのトイレに少女が行ってしまう可能性も。
だが、シリアにはあるアイディアがあった。

到着まであと30分…もう一度ドリンクサービスで機内を回ったシリア。
これは、規定の作業だったのだが…
同僚が男性にコーヒーを渡す時に、わざと砂糖を足元に落とした。
男性が同僚に気を取られている隙に、シリアが少女にトイレに行くように伝えた。
その後、シリアはいつ少女が来てもいいように、トイレ付近に立った。

彼女の立てた作戦はこうだ。
まず、2つあるうち、少女の座席に近い方のトイレの鏡にメモを貼っておく。
そして勝手に誰かが入ってしまわないようカギを掛け、自分が前に立つ。
少女がこのトイレに来たときにだけ、カギを開けて中に入れようというのだ。

少女がトイレを出た後、シリアが即座にメモを回収。
そうすれば、他の乗客がメモに気づくことはない。
だが、もし少女がトイレに来なければ、すべては水の泡。

その時、少女が席を立った。
だが、男性も一緒についてくる…もし男性が先にトイレに入ったら、少女を救うことができない。
シリアは二人に声をかけ、「女性優先でお願いしていますので」と言い、少女が先にトイレに入るように促した。

だがその時、シリアは重大なミスに気づいた。
もう一つのトイレも使用中…もし、少女が先に出た後に、すぐ男性が同じトイレに入ろうとしたらメモを見られてしまう。
その時、もう1つのトイレが空いた!
男性にそちらのトイレを促したが…男性はトイレには入らず、少女と共に席に戻って行った。

果たして、少女はメッセージを確認してくれたのか?
シリアはメモに「助けが必要か?」と書き、返答用のペンも置いておいた。

そして、シリアがメモを確認。
表には何も書かれていなかったが、メモを裏返すと…「I need help(助けて)」の文字が!
シリアは、機長にこのことを報告した。

飛行機はサンフランシスコ国際空港に到着。
だが、まだ席を立たないよう、機内アナウンスの指示が流れた。
そこに、警察が乗り込んできて、男を連行。
少女の救出に成功した!
そして、その後の捜査の結果、衝撃の真相が明らかとなる!

発端は数か月前に遡る。
シカゴで暮らす少女はいつも通り、学校から自宅へと帰る途中だった。
次に目を覚ました時には、手足を拘束され車に乗せられていた。

暴力による恐怖で精神を支配された彼女は、逃げることもできなかった。
数ヶ月、シアトルで監禁された後、あのサンフランシスコ行きの飛行機に乗せられ…
その後、台湾に売り飛ばされる予定だったという。

事件から数カ月後…シリアに電話がかかってきた。
見慣れない番号だったのだが、電話はあの少女からだった。

その後も、少女からシリアさんに時々電話があるという。
シリアさんによると、少女は今なお心の傷が癒えず、セラピーを受けながら、今年、大学院に進学、徐々に日常を取り戻しつつある。

その一方で…犯人は大規模な人身売買組織の一員であると推測されるが、全容解明には未だいたっていない。
そして今もなお、多くの子どもたちが闇の中へと引きずり込まれ、その数が増加の一途を辿っているのは、紛れもない事実なのだ。

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